ウィルチェアファミリーチャンネル

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60万を心の安定につかった話

 

こんばんは、えりちゃんです。

 

受傷前、我が家はもともと賃貸住まいでした。

 

よくある2LDKの賃貸マンション。

マンションのエントランスからすでに段差がある賃貸マンション。

玄関も段差があるし、リビングに行くにも段差がある賃貸マンション。

キッチンもトイレもお風呂も、よくある最小限の場所に最小限の設備を揃えた感じの賃貸マンション。

 

脊髄損傷した日も、旦那さんはその賃貸マンションから出かけていきました。

そしてそのまま、帰ってこなくなりました。

 

今日は受傷後の、賃貸マンションのお話です。

 

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旦那さんが受傷した日、わたしは実家に帰りました。

当時のことはあまり記憶がないのですが、ひとりでは居られない状態で実家に保護されたという感じでしょうか。

 

賃貸マンションと実家はそこまで離れていない距離でしたので、生活環境が大きく変わることもなく大移動とならなかったのが不幸中の幸い。

 

実家に帰ったとはいえ、〝脊髄損傷でも奇跡的に回復した例〟ばかりを探して旦那さんも本気で思っていたので受傷後すぐは賃貸マンションを解約するという選択肢は毛頭にもありませんでした。

実家は一時的な仮住まいの気持ちでした。

 

でもどんどんと現実を目の当たりにしだして、車椅子ユーザーになるという、当時の私たちにとっては非日常の壁にぶち当たった時、今の賃貸では住めない。という思いが頭によぎりました。

受傷して2ヶ月目くらいだったはずです。

 

帰ってきても車椅子で入ることのできないこの家をいつまでも借りておく必要はない。

それでも思い出のたくさん詰まった場所。

解約をしたら旦那さんは帰ってくる場所を失う。

賃貸やったとしても二人三脚で生きてきた場所を、この家用無しや、ほな!と手放す勇気もなく。

 

数ヶ月、無人のまま借り続けていました。

1、2週間に一度、空気の入れ替えや荷物をとりに行く日々が続いていました。

 

義母からは

家賃もったいないから早く解約して息子(旦那さん)の治療費にあててあげてほしい。

と言われたこともありました。

誰も住んでいない家に月10万払うなら、その10万を息子の治療へ使ってはくれやしないか。

その考え方もよくわかります。

 

でも当時のわたしは繊細で、旦那さんと二人三脚で生きてきた場所をすぐに手放す決断ができませんでした。

住む勇気も、手放す勇気もなく過去になりゆく空間にしがみつき数ヶ月。

 

 

大きくなるお腹をきっかけに、母つよし。

(のろのろと)家を開け渡す作業をすすめ、親の手も借りながら受傷後半年を経てようやく部屋の明け渡しとなりました。

 

今考えるとたしかに無人の部屋にお金を払い続けるのはもったいない行為でした。

そのお金は他に使うこともできたお金です。

 

ただ、まったくの無駄でもったいないお金だったかというと当時のわたしにとっては必要なお金の使い方だったとも思います。

 

受傷後数ヶ月はショックや不安、怒りや恐怖といったさまざまに波打つ感情を吐き出している時間です。

現実と向き合うのを避けながらも、受け止めようとするには気力も根気も入ります。

 

そんななか、ひとりで賃貸マンション解約や引っ越しの手配をするのは大仕事。

そもそも引っ越しは正常な気持ちの時でも一大イベントですよね。

 

賃貸マンション解約を視野にいれてから手順を調べたり、新しい駐車場を探したり、荷物の整理をしたり。

基本的には自分が主となり行動に移す作業になるので、物理的な環境の整備をしているうちに数ヶ月経ったわけでもありますが、その間も荒れた心は妥協点を見出したりします。

それも含めて妥当な期間だったと思います。

 

 

受傷後は、本人だけでなく家族の生活も大きく変わります。

ぜひ、ご家族の方は無理のないように、ご自身の心を守ってくださいね。